愛する者との別れ

2020/06/07 Sun 18:38

 ご高齢の女性を今朝看取りました。
ずっと病いのためいろいろな治療を受けられましたが、この春よりお体が弱られ病院で寝たきりとなってしまいました。
これまでご自宅を愛していた方でしたので、ご本人の意思表示ができませんでしたが、息子さんとお嫁さんが「母を自宅に連れて帰りたい」とご希望されました。
私が初めてご自宅へ伺ったとき、住み慣れたお家で,日当たりのいいお部屋に寝ておられました。

私が大変尊敬する神谷美恵子先生の著書「こころの旅」に次のような一節があります。
「気をゆるせる者の中で、安らかにくらすことできれば、老いは自然にゆるやかな形で進行し、死もその棘を失い、やがて自他の区別もなく、時空を超えたまどろみの中でこの世を去って行くのであろう。」(「こころの旅」p181)

今朝の亡くなり方は、まさに「時空を超えたまどろみの中でこの世を去って行く」でした。

愛する者との別れ…看取りがどれほど穏やかなものであったとしても、逝く人と、遺される者の魂の中には、心が引き裂かれるような痛みがあるかもしれません。
しかし神谷美恵子先生は次のように書き残されています。
「愛する者との別れ、といってもほんとうは別れでなく、べつな状態で存在するだけなのだ…」(「人間をみつめて」p94)

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涙…伝わる悲しみ

2020/04/11 Sat 20:18

100歳を超える女性の方を看取りました。
ずっと住み慣れたご自宅で息子様ご夫妻がよく看病されていました。
調子の良いときには、ご自宅横のベンチに息子様とご一緒に腰掛けられ、暖かい日差しに守られていた光景が忘れられません。

しかしここ数日、急に病状が悪化し、本日深夜にご逝去されました。
私の診断の後、息子さんが、本当にお辛そうに、
「(私は母に)本当によく育ててもらったから、(私が母を)良く看なきゃあと、母を大切にした…。」
と、ここまで一気に言われた後、涙を流されて
「涙を流すのは初めてだ。今までの人生で、初めて涙を流しました…」とおっしゃりました。

私がご自宅を出る時、息子様は玄関まで送ってくださいました。
車に乗り込んでエンジンをかけたとき、
普段、医師という仕事に徹しているせいか、決して涙を見せない私の瞼に涙が噴出してきました…。

帰りの車の中で、私の好きな曲「Journey」(作詞・作曲 桑田佳祐)が流れていました。
この曲は桑田佳祐さんがやはりお母様を亡くされたときに作られた曲です。

「とうに忘れた幼き夢はどうなってもいい
あの人に守られて過ごした時代さ
遠い過去だと涙の跡がそう言っている」

涙・・・伝わる悲しみ…

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意味の世界

2020/02/11 Tue 20:50

 今日は私の尊敬する静岡大学特任教授の松田純先生が東京大学名誉教授の大井玄先生を呼んでくださり、学びの時に参加させていただけました。大井玄先生は認知症の方や看取りの方を多く診てこられた先生です。私はこの大井先生にぜひお会いしたいと松田先生におねだりしていました。大井先生は認知症の方の「意味の世界」を大切になさっていますが、松田先生から、実際のケアをする方の「認知症の方の話に合わせるために嘘をつく」という発言を教えていただきました。私も考えさせられる内容でした。

今日、ある方を看取りました。
最期の死亡診断の時、伺った私にご家族が私の顔を見るなり、私の胸に顔をうずめて泣かれました。
「本当の悲しみ」

大井先生と松田先生の話は続き、「傍に居る人」との本当の人間関係が大切とお聞きできました。
表層のおざなりの言葉ではなく、本当の関係…。
「本当の悲しみ…」

考えさせられる一日でした。

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あらたに光を求めつづける

2020/01/02 Thu 15:35

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

今年はお正月から病いの方の往診に伺いました。
なかにはかなり病状のすぐれない方もおられます。
いろいろ考え、感じながら車を運転して患者さんのお宅を巡りながら
車の中で若松英輔さんの講演を聴いていました。
何度も聴いていた講演ですが、ある個所がとても心に響きました。
それは神谷美恵子の
「病めるひとたちの問題は人間みんなの問題なのである。であるから私たちは、このひとたちひとりひとりとともに、たえずあらたに光を求めつづけるのみである。」という言葉をうけて
若松英輔さんは
「われわれが探さなくてはいけないものは光り輝くようなところにはないかもしれない。
もっと違ったところに隠れているんじゃないか…
人々から高い尊敬を受ける人が、高いところから語るところにあるのではなくて
誰も顧みない人が、一人部屋で呻いていることの中に、人生の真実があるのかもしれない。
われわれはそういう人に寄り添うのは時に難しいかもしれない
でも皆さんがそういう苦しみや悲しみに生きるときとても大事なことと直面しているんだ。」

「誰にも顧みられず、一人部屋で呻いているひと」
そこに本当の光を求めつづけていきたいです。

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 暮れも押し迫る日、ある高齢の女性をご自宅で看取りました。
ご高齢であられたので主に看病にあたられていたのはお孫さんご夫妻でした。
本当によく看病された…
長いお付き合いの間、私はお伺いするたびに、このお孫さんであるご夫妻に本当に大切なことを教えていただいていました。
しかし最期の時は来てしまいました。
私が最後の診察をする中、お孫さんご夫妻は悲しみにじっと耐えておられました。

人が人を大切にすることほど素敵なことはない。
しかし大切な人であればあるほど、最期の別れの悲しみは深い。

今年の9月に私が本当に尊敬する若松英輔先生にお会いできました。
その中で若松先生は「最も悲しいことは(目に)見えない」とおっしゃっておられました。

目には見えない最も悲しいこと、それを感じる心を持ちたいです。
私の来年への課題です。
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