アスハルトと海辺の砂浜

2022/06/26 Sun 21:15

『生活があって人生のない一生ほどわびしいものはない』遠藤周作
私の好きな作家に遠藤周作がいます。(私と同姓ということで好きなわけではないですが)
遠藤周作によれば「生活」は役に立つこと。「人生」は役に立たぬこと。
そう思うと、私は生活ばかりを追い求めています。
いったい、いつになったら人生を考え始めるのでしょうか?
私みたいに唯物的な人間には「人生」を考えることは不可能なのでしょうか?

たんぽぽ診療所にはいろいろな人が訪れますが、皆さん様々な病いとともにおいでくださいます。
その方々のお話を伺いながら、「人生」とはこの方々が今、歩んでおられる道を言うのではないかと感じています。

昨年、遠藤周作没後25年に新しい原稿が発見されました。
「影に対して」
遠藤周作があまりに身近なことを書いたので、出版されなかったのではないかと推測されている作品です。
その中に
「あなたは海辺の砂浜を歩くのか、アスファルトの道を歩くのか?
アスファルトの道は安全だけれど、振り返っても足跡が残っていない。砂浜は歩きにくいけれど足跡が残る。」という一文があります。
やはり私は楽なアスハルトの道を追い求めてしまいます。
しかし、たんぽぽ診療所に、私の前に、現れてくださる方々の中には、海辺の砂浜を歩かざるを得なくなった方がいらっしゃいます。
一歩一歩前に進むのが大変で、途中で倒れてしまい、立ち上がることさえ苦しい方々がいらっしゃいます。

本当に生きている方々。


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