共鳴して鳴り出す弦

2021/08/12 Thu 09:44

 深夜、ある女性を看取りました。
まだ60歳代の方です。
癌の末期とはいえ、ここ1週間で急速に病状が悪化し、献身的に看病される娘さんとご主人に看取られて静かにご自宅で逝かれました。
臨終の時、娘さんの嘆き悲しみはそれは深いものがあり、私もかける言葉がありませんでした。
その時、ご一緒してくださった訪問看護師さんが言葉少なくですが娘さんに慰めの優しい言葉をかけてくださいました。

私の愛読書「生きがいについて」に次のようなコトバがあります。

〈ひとたび生きがいをうしなうほどの悲しみを経たひとの心には、消えがたい刻印がきざみつけられている。
それはふだんは意識にのぼらないかもしれないが、
他人の悲しみや苦しみにもすぐ共鳴して鳴り出す弦のような作用を持つのではなかろうか。〉
(神谷美恵子著  生きがいについて  134頁)

悲しみなんか無い方がいいと、今も弱虫の私は思い続けています。
しかし、そうはいかない。
でも、この訪問看護師さんが持っていらしたような「共鳴して鳴り出す弦」を手に入れるには
「生きがいをうしなうほどの悲しみ」を通らなくてはならないのでしょうか…。

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