添い寝

2019/07/15 Mon 14:18

 まだお若い男性をご自宅で看取りました。
病いが進行している中で、ご自宅にお伺いすると
「今日は孫娘が来るんだ。試しにクッキー作ってみたから先生食べてみてよ」と
男性が作るクッキーとは思えないほどおいしいクッキーをいただきました。
(お体の調子が悪い中、このクッキーを作るのがどれ程大変だったか…
でもそれほどに孫娘さんがおいでくださるのが嬉しかったのでしょう。)

この男性の奥様は、本当によく看病されました。
本当に…

最期の時、奥様はベッドで亡くなるご主人様に添い寝して看取られました。
「死を生きた人びと」(小堀鴎一郎著)に次のような文章があります。
「最期の別れに医者は邪魔だなと腰を上げた。
数分後に戻ると六畳間のベッドで添い寝し、
父親を交互に抱きしめる家族の風景が目の前にあった。」


この男性の通夜は昨日、今日は荼毘にふされました。

私がいつも読み継いでいるコトバがあります。
「彼らのからだは切きざまれ、焼かれはした。しかしそれは皆もとの元素になって、
大自然の中にかえって行ったにちがいない。
松の木の間をわたって来る風の中にもそれは舞っていることだろう。
木と草の下でしずまりかえっているこの島の土の中にもそれはしみこんでいるだろう。
そして死者の生きた足跡は、
歴史を通して無形のうちに私たちの生に働きかけているのだと思う。」
              (「万霊山にて」  神谷美恵子「人間をみつめて」より)


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