常世の花

2019/04/21 Sun 18:30

 今、若松英輔著「常世の花」を読んでいます。
石牟礼道子の「死民たちの春」という詩が紹介されています。

「死民たちの春」
ときじくの
かぐの木の実の花の香り立つ
わがふるさとの
春と夏のあいだに
もうひとつの季節がある

「ときじくの/かぐの木の実の花の香り立つ」とは、『古事記』に記されている彼方の世界「常世の国」にあって季節を問わず豊かな香りを放つ木の実を指す。亡き者たちの沈黙の声は、木の実の「香り」のように彼女(石牟礼道子)のもとを訪れていたのだろう。
(「常世の花」p25)

昨夜、ある方を看取りました。
娘さんの看病を受けながら、ご自宅で静かに生活をされていました。
「90歳になるから、もうこのままでいいです」と、次第に食べられなくなる状態でも穏やかに私の医療のすすめを断られました。
昨夜、「すーっと」本当に穏やかにこの世を去って逝かれました。

明けた今朝、静かな空気の中に
「春と夏のあいだのもうひとつの季節/亡き者たちの沈黙の声」を聴いたのは私だけでしょうか…
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