良き外科医~岡本好史先生

2020/11/07 Sat 18:02

先日、ある女性を看取りました。
ずっと長い間たんぽぽ診療所に糖尿病でおかかりでした。
途中、乳がんが発見され、静岡済生会病院副院長の岡本好史先生にもお世話になりようになりました。
(岡本先生は、私の研修医時代、1年先輩で、その後もずっと公私ともお世話になっているとても素敵な先生です)

この女性はタバコもたくさん吸い、なかなか医者泣かせの患者さんでしたが、私はどういうわけかこの方が好きでした。
娘さんとご一緒にいつも通院されていましたが、いよいよ病状が厳しくなり、ここ1か月は在宅診療でお家に伺っていました。
お家に伺うたびに、よく看病する娘さんの悲しみがひしひしと伝わってきて、「ああ、やはりお家でよかった」と思っていました。

亡くなった日、娘さんの肩に手を当てることしか私にはできなかった。

その翌日、私は済生会病院の勤務日でした。
お忙しい岡本先生のお邪魔にならないようにと手紙でこの女性の訃報をお知らせすると、
その手紙を読んでくださった岡本先生からすぐにご連絡をいただきました。
お電話口での岡本先生のお声、お言葉から、この女性と娘さんの事を労わるお気持ちが伝わってきて
岡本先生というとてもいい外科医に診ていただいたことへの感謝の気持ちでいっぱいでした。
未分類 | コメント(0)

聴く

2020/10/28 Wed 22:01

 この9月にアルフォンス・デーケン先生がお亡くなりになりました。
デーケン先生はドイツより日本に来られ、「悲しみのケア」を広められた方でとても御高名な方です。
私はひょんなことから先生にお会いすることが許され、それ以来静岡にも3回お招きすることができました。
今は先生と私の家族で撮った写真が宝物です。

そのデーケン先生が「悲しみのケア」で大切なことは「相手の話を聴くこと」とおっしゃられます。
デーケン先生のお言葉を借りれば
「良い聴き手であり、話したくない時も黙って傍にいてくれる人」とあります。

私は沈黙が怖い人間で、このデーケン先生の教えをなかなか実現できずにいます。

当院のホームページには心理カウンセリング想月様のことが載っています。
沈黙が怖い私は、せめてもの罪滅ぼしに想月様のことをご紹介します。
代表の山本麗子先生は本当にステキな方で、私が尊敬するカウンセラーです。

Mind(こころ)と Body(からだ)はつながっていて、どちらかで不調をきたせば、もう一方に影響を与えます。
私は内科医として、長年、Body(からだ)の癒しを、患者さんと一緒に取り組んでいます。
Mind(こころ)の方でつらさを抱えた時は、想月さんのような心理カウンセリングをお勧めします。
未分類 | コメント(0)

血を流す心

2020/10/18 Sun 11:20

 前回このブログを書いたのは6月でした。
あの頃からとても辛いことがあり、まったくブログを書けませんでした。

日記を以前からつけています。
日記を書くのも毎日ではありませんが、私以外、決して誰の目にも触れない文字を綴っています。

ブログを書けなくなった頃から、日記を書くのは毎日となりました。
文章ではない、心の叫びを書く、いや、書かざるを得なかった。

7月、辛い日々が終わった後も、やはりブログを書けない日が続いていましたが
最近やっとその頃の日記を読み返す余裕が出てきました。

文章ではない、決して誰にも見られない私の心の叫び…しかしこれぞ本当のコトバ…

神谷美恵子の言葉
「どこでも一寸切れば私の生血がほとばしりだすような文字、
そんな文字で書きたい…
体験からにじみ出た思想、生活と密着した
しかもその思想を結晶の形でとり出すこと」

7月からも幾人もの悲しみの中にいる方々から「本当のコトバ」をお聴きました。「本当のコトバ」をお預かりしました。

また一からやり直しです。
「本当のコトバ」をお伝えしていきたいです。



未分類 | コメント(0)

愛する者との別れ

2020/06/07 Sun 18:38

 ご高齢の女性を今朝看取りました。
ずっと病いのためいろいろな治療を受けられましたが、この春よりお体が弱られ病院で寝たきりとなってしまいました。
これまでご自宅を愛していた方でしたので、ご本人の意思表示ができませんでしたが、息子さんとお嫁さんが「母を自宅に連れて帰りたい」とご希望されました。
私が初めてご自宅へ伺ったとき、住み慣れたお家で,日当たりのいいお部屋に寝ておられました。

私が大変尊敬する神谷美恵子先生の著書「こころの旅」に次のような一節があります。
「気をゆるせる者の中で、安らかにくらすことできれば、老いは自然にゆるやかな形で進行し、死もその棘を失い、やがて自他の区別もなく、時空を超えたまどろみの中でこの世を去って行くのであろう。」(「こころの旅」p181)

今朝の亡くなり方は、まさに「時空を超えたまどろみの中でこの世を去って行く」でした。

愛する者との別れ…看取りがどれほど穏やかなものであったとしても、逝く人と、遺される者の魂の中には、心が引き裂かれるような痛みがあるかもしれません。
しかし神谷美恵子先生は次のように書き残されています。
「愛する者との別れ、といってもほんとうは別れでなく、べつな状態で存在するだけなのだ…」(「人間をみつめて」p94)

未分類 | コメント(0)

涙…伝わる悲しみ

2020/04/11 Sat 20:18

100歳を超える女性の方を看取りました。
ずっと住み慣れたご自宅で息子様ご夫妻がよく看病されていました。
調子の良いときには、ご自宅横のベンチに息子様とご一緒に腰掛けられ、暖かい日差しに守られていた光景が忘れられません。

しかしここ数日、急に病状が悪化し、本日深夜にご逝去されました。
私の診断の後、息子さんが、本当にお辛そうに、
「(私は母に)本当によく育ててもらったから、(私が母を)良く看なきゃあと、母を大切にした…。」
と、ここまで一気に言われた後、涙を流されて
「涙を流すのは初めてだ。今までの人生で、初めて涙を流しました…」とおっしゃりました。

私がご自宅を出る時、息子様は玄関まで送ってくださいました。
車に乗り込んでエンジンをかけたとき、
普段、医師という仕事に徹しているせいか、決して涙を見せない私の瞼に涙が噴出してきました…。

帰りの車の中で、私の好きな曲「Journey」(作詞・作曲 桑田佳祐)が流れていました。
この曲は桑田佳祐さんがやはりお母様を亡くされたときに作られた曲です。

「とうに忘れた幼き夢はどうなってもいい
あの人に守られて過ごした時代さ
遠い過去だと涙の跡がそう言っている」

涙・・・伝わる悲しみ…

未分類 | コメント(0)
 | HOME | Next »