いのちの歌

2022/04/03 Sun 18:41

 2/19(土)に静岡県ボランティア協会様の企画の「地域共生フォーラム」でお話をさせていただきました。会場は静岡サレジオ高等学校マリアンホール。第一部は二胡奏者 鈴木裕子さんの演奏。第二部は私の「いのちの授業~大切な人に~」という話。そして第三部はわたぼうしコンサートととても有意義な時間を過ごさせていただきました。
私の話の題名が「いのちの授業」だったので、第一部の鈴木裕子さんはその最後の演奏曲に「いのちの歌」を選んでくださいました。この曲は昨年私が関わらせていただいたがん末期の方が大好きだった曲で、すでにこの世にいないその方を思い出しながら聞かせていただきました。

いのちの歌 作曲︰村松崇継 作詞︰Miyabi(竹内まりや)
生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに
胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ
この星の片隅で めぐり会えた奇跡は
どんな宝石よりも たいせつな宝物
泣きたい日もある 絶望に嘆く日も
そんな時そばにいて 寄り添うあなたの影
二人で歌えば 懐かしくよみがえる
ふるさとの夕焼けの 優しいあのぬくもり
本当にだいじなものは 隠れて見えない
ささやかすぎる日々の中に かけがえない喜びがある
いつかは誰でも この星にさよならを
する時が来るけれど 命は継がれてゆく
生まれてきたこと 育ててもらえたこと
出会ったこと 笑ったこと
そのすべてにありがとう
この命にありがとう

 先日、ある男性を看取りました。
亡くなっていく時に、奥様がその方の手を握り「お父さん(その方の事)、ありがとうね」と幾度も幾度も泣きながら声をかけていました。その声を、息子さんが悲しみにじっと耐えながら聞いていました。
上述の「いのちの歌」に「本当にだいじなものは 隠れて見えない」とあります。
そう、大事なものは、みんなが探すきらびやかな世界にはない。
「泣きたい日もある 絶望に嘆く日」の中に本当に大切なものがあると患者さんとご家族が教えてくれます。



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リメンバー・ミー

2022/02/02 Wed 19:43

「人間は二度死にます。まず死んだ時。それから忘れられた時。」という言葉を以前聞きました。

癌の末期の男性をご自宅で看取りました。
奥様と娘様が献身的に看病されました。
病状が日に日に悪化していく中で、ある日曜日に、心配で昼間、ご自宅にお伺いしました。
口から喉が乾燥してしまっていたので、娘様に「口元の加湿器があるといいと思いますよ」とお話ししました。

その日の夜、携帯が鳴って、ご自宅に駆け付け、その方を看取りました。
看取った後、娘様が「先生にすすめられた加湿器をすぐ購入したら、父はとても息づかいが楽になりました。」と涙ながらにお話ししてくださいました。

「リメンバーミー」という映画があります。
メキシコ等で行われる「死者の日」をテーマにした作品。

ちょうどこの看取りの日曜日、家族で見ていました。
夜の往診から帰った後、もう一度、その途中から見ると、最後に主人公ミゲルがこの世から去り行く曾祖母に
「リメンバー・ミー  お別れだけど  リメンバー・ミー  忘れないで
たとえ離れても  心ひとつ  おまえを想い唄うこの歌…」
とギターを弾きながら歌います。

「人間は二度死にます。まず死んだ時。それから忘れられた時。」

この娘様は、きっと、お父様のことをいつまでも忘れないでしょう。
忘れない…。

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宇宙の愛をひきつけ

2021/12/05 Sun 11:40

 昨夜は新月で金星が最も明るい日でした。宵の明星とはよく言ったものです。子供の頃、天文が大好きだった私は、先月から「月食」、「木星、土星、月、金星が一直線」と天体ショーが目白押しで楽しんでいます。こんな特別な天体ショーでなくとも、冬の夜はオリオン座がきれいに輝きます。私の目に飛び込んでくるこれら天体からの光が、どれだけ宇宙を旅してきたかいつも考えながら見ています。一番近い月までは38万キロメートルなので、1.3秒旅した光、金星も意外と近く1億5000万kmで約8分旅した光、木星までは7億5000万kmで約40分旅した光、土星までは15億kmで約80分旅した光。宇宙空間をこれだけ旅して私の目にやって来てくれたのです。さらに毎日見れるオリオン座ですが、星座なので複数の星があり、1番近い星で300光年、1番遠い星で1,000光年以上…。こんなに長く旅してきたんだ…。

ある女性を看取りました。癌の末期でしたが無口でカッコいいご主人様が本当によく看病されました。最期の時、臨終を告げる私の横で、ご主人様は目に涙をためてじっと悲しみに耐えておられました。

「愛する者との別れ、といってもほんとうは別れではなく、別な状態で存在するだけなのだ。
ひとりの人間を、ひとつのいのちを形成していた物質とエネルギーが、地球上に、そして宇宙の中にちらばる。
それは天の河や、もっとはるかな星雲の中にもとびちるかも知れない。
そしてその人間が地上で生きた生の歩みは、人間の歴史の中にひそかな跡をきざんで行くのだ。」
                     (神谷美恵子 「人間をみつめて」 p94)


無口でカッコいいご主人様の中にひそかな跡をきざんで…



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いつも 静かに 微笑んで

2021/11/06 Sat 22:05

 100歳を超える女性の方を看取りました。
もう何年も主治医としてお付き合いさせていただきました。
ご年齢が進む中でも、お伺いするたびにいつも静かに微笑まれている方でした。
お年を召されることは決して楽なことではないと思います。
思うようにならないお身体は苦しいこともあったでしょう。それに伴いお心もさぞお辛いことがあっただろうと推測します。
しかしその方はいつも静かに微笑んでいた…。
ここ数日は全く食事もとれず、娘様ご夫妻が献身的に看病されていました。
そして、最期の時がやって来てしまいました。
その方は何度も何度も両手を上にあげて、そののち息を引きとられました。それを見ていた娘様は「母が、さあ天国へ行くよ」と言っているようでしたとおっしゃっておられました。

「今日は死ぬのにもってこいの日」という本があります。
そこに、こんな言葉が載っています。
「今日は死ぬのにもってこいの日だ。
生きているものすべてが、わたしと呼吸を合わせている。
(中略)
子どもたちは、うちに帰ってきた。
そう、今日は死ぬのにもってこいの日だ。」

この100歳を超えた方を、ひとは大往生でしたと言うでしょう。
でも私はこの方が大好きでした。
ですから、もう少し、もう少し、生きていてほしかった。


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共に悲しむ涙

2021/10/20 Wed 21:27

 私の好きな作家に遠藤周作がいます。(別に私と同姓だから好きというわけではないですが…)
遠藤周作が自ら病いで入院されていた時の事を書かれた文章です。
「その日の黄昏である。夕陽のさしこまぬ影に椅子をもち出して本を読んでいた私はふと目をあげた時一つのあまりに切ない光景をそこに見た。男の若い細君がこちらに背を向けて、夫の手を握りしめているのである。その時、私の心には今日、掃除婦から聞いた話がうかびあがってきた。「今日ね、先生があの奥さんにもうご主人は駄目だって言ったんでねえ」
(中略)私の心を強く衝いたのは彼女が夫の手を固く握りしめていたことである。夫の手を握りしめることによって彼女が死をあと数日にひかえた彼の苦悩を共に背負おうとしていたことである。」

先日、たんぽぽ診療所から癌の末期の男性のご自宅へお伺いしました。もう病状がひどく、あと数日と思われました。横たわるご主人のベッドサイドで診察を終えた私にご主人の足元に立っていた奥様は「(主人は)毎日毎日弱っていく。この人いなくなったら、私は天涯孤独になっちゃう…」と泣きながら訴えます。私は一言も返事ができず、思わず私の左手で奥様の手を触り、私の右手は横たわるご主人様の手を握っていました。お二人の手と手をつなぐように…。
すると、私の診察に立ち会ってくださっていたすずらん薬局中吉田店の薬剤師の先生がすすり泣く声が聞かれました。薬剤師の先生は、在宅診療の後いつもご主人様のお薬を薬局に取りに来られる奥様のお話をよく聴いてくださっていました。
あの時、私はご夫妻の手をつなぐことしかできませんでした。しかし薬剤師の先生は共に悲しむという涙を流してくださいました。共に…。

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